がめろげっ

好きを気ままにテキトーに。

【遊戯王Advent Calendar 19日目の昼】No scared!ー恐れるなー

 

融合ー。それは時を経て進化する召喚法。

アニメを追求してきた、くらくが描く「融合」についての原点回帰

yamachi-9rakura.hatenablog.com

大ヒット公開中

 

 

総勢50名の決闘者が集うドキュメンタリー

想いを!カードを!言葉に変え繋いでいく物語。

刺身 presents.

遊戯王Advent Calendar 2021

sashimimihsas.hatenablog.com

大ヒット公開中

 

 

 

f:id:luciker:20211218221418j:image

 

 

f:id:luciker:20211218231800j:plain

 

               No scared!

 

 

 

 

 

悪夢が終わり、俺の復讐は幕を閉じた。

f:id:luciker:20211217230621j:plain




ーー〇〇。俺もそっちへ行くよ…

 


オレは「死ねなかった」。

憎しみに駆られ自分を捨て、愛する者の復讐を果たし自分も消える事で全てが終わると。

だが復讐のために手にした異形の力がそれを許さなかった。

オレも……「ヤツら」と同じだった。

 

彼女がいない。

一緒に笑って泣いて、喧嘩もしたが隣には彼女がいる。

幸せな日々がずっと続くと思っていた、でも今は彼女との記憶が棘になって俺を苦しめる。

空っぽだった俺は「俺を殺せる者」を探して「死に場所」を求めて彷徨っていた。

ある時、流れついた街の路地裏で少女が2人の男に絡まれていた。

 

「おい、コイツじゃねぇか?教団が探してる『金髪の少女』ってのは」

 

眼鏡の男が少女の腕を掴み上げる。

 

「きゃっ…!急に何なのよ!レディに対して失礼でしょ!?」

「へへへ…なら早く教団へ連れて行こうぜ。これでオレたちにも教団の加護が…!」

 

男共が少女を無理やり連れて行こうとした時、片割れの細身の男と目が合った。

 

「なんだァ?お前?コイツはオレたちが見つけたんだ。オレたちが教団に差し出して加護を授かるんだぞ?とっとと道開けろ!」

「何、勝手なこと言ってるの!離して!」

「うるせぇ!!黙ってついてこい!!」

「アナタも!見てないで助けてよ!!」

 

ため息が出た。ギャーギャーうるさい連中だ。

 

「さっさと、どけっつってんだろ!!」

 

痺れを切らした細身の男が、俺をどかそうと突き飛ばした。

ゴミ捨て場によろめき、羽織っていた布が脱げた俺を見た男が悲鳴をあげた。

 

「ひっ…!ば、化物だぁああああ!!」

「おおお、おい!置いていくな!!」

 

当然の反応だ。顔無しに赤く燃える瞳。腕と背中からは骨が生えている。

俺を化物と呼ばずに何と呼ぶ?俺が立ち上がろうとした時ーー

 

「あ、アナタ大丈夫?ケガしてない?」

 

少女が俺に手を差し伸べてきた。その時ふと『彼女』がよぎった

 

「ずっとそこにいたら汚いわよ?さ、立って!」

『ずっとそこにいたら汚いわよ?さ、立って!』

 

俺は少女に聞いた。

 

ーー……。俺を見て何も思わないのか?

「あら、アナタは私を”助けてくれた“。そこに化物だ何だって関係あるかしら?あ、でもアイツらが勝手に逃げ出しただけだし…どうでしょうね?化物さん?」

 

悪戯っぽく笑う少女は何故か『彼女』を連想させた。

 

ーー…変わった嬢さんもいるもんだな

「ふふっ、アナタがそれを言うの?そうだ、この街は初めて?お礼に私が案内してあげる!受けた恩は返すんだよってパパにいつも言われてたの!あ、自己紹介がまだだったわね。私はコロンよ。アナタは?」

f:id:luciker:20211218014039j:plain



 

ーー俺は……シオンだ

「シオン!綺麗な名前!そうね…どこを案内しようかしら…あ!爺さまの所に行きましょうか!あそこなら帰る途中に寄り道できるし、さ!行きましょう」


コロンが差し伸べた手を掴み立ち上がる。

布を羽織り直し、強引なコロンの「お礼」に呆れつつ後をついて行く。

「爺さま」の所へ向かう途中、コロンは彼がどういう人物かを話してくれた。

なんでも「写真やペンダントなどを元に、動物や物体を呼び寄せることが出来る」らしい。そして「思い入れ」が強ければ強いほど良いらしく、全盛期には人や竜、魔物なども呼び寄せることが出来たとか。なるほど、子供たちが喜びそうなマジックだ。

f:id:luciker:20211218013448j:image

 

 

「おぉ!コロンか!よく来たのぉ」

f:id:luciker:20211218014016j:plain

 

 

「爺さま!こんにちは!あ、この人はシオン。危ない所を助けてもらって、そのお礼に街を案内しているの」

ーーシオンだ。

「そうじゃったか…ワシはコロンの身内ではないがワシからも礼を言わせておくれ。ありがとう」

ーーよせ、大したことはしてない。

「そうだ、爺さま。シオンに爺さまの魔法見せてあげて?シオンったら手品だろうって信じてくれないのよ」

「ほっほっ、コロンや。任せろ!と言いたい所じゃが、近頃は教団がうるさくてのぉ…呼び出す子たちも怯えてしまってな、休止中なんじゃよ」

「えー!そんなぁ…」

ーー……。その教団ってのは何なんだ?加護がどうとか男たちは言っていたが

「お前さんも大変な時に来たのぉ…。ふむ、どこから話そうか…」

 

爺さんが言うには

この街は色んな民族や獣人たちが集まって築いてきた街で、迫害され国を追われた者たちも分け隔てなく受け入れてきた。だが平和な日々も続かず「ドラグマ」という教団国家が領土を拡げるため街に押し寄せた。教団は「神の加護」と称して従う人々には「聖痕」を施し、獣人たちを迫害していった。街の人々は教団に反撃しようとレジスタンス「鉄獣戦線」を作ったが、圧倒的な戦力差に次々と教団に従うようになっていった。そんなある日「教団の聖女が1人の少年と国を脱走した」と知らせを聞いた教団は街の人々に「脱走した『金髪の少女』を探し出し、我々の元へ連れてきた者には加護を授け、身の安全を約束しよう」とけしかけた。その日を境に街は変わってしまったという。

 

ーーなるほどな。で、躍起になったヤツらがコロンを「金髪の少女」として連れていこうとしたのか

「少し前までは楽しく皆で遊んでたのよ?それなのに……」

「お前さんも気を付けるんじゃぞ。そんな『骨の腕』を生やしておっては街に居座るのも一苦労じゃろうて」

ーー!?

 

俺は姿を悟られないように爺さんの前では布を脱いでいなかった

 

「ほっほっほっ。ワシには、まるっとお見通しじゃ。安心せい、お前さんに何があったかを探る気もない……。?」

ーーどうした?爺さん

「詮索するつもりはないんじゃが…少し首のロケットを見せてはくれんか?」

ーーこれか?別に構わないが

「…!これは…」

「爺さま!私にも見せて〜!わぁ…!素敵な写真ね、2人とも幸せそう!」

「そうじゃのぉ。シオンとやら、このロケットには何か特別な力を感じるよ。いつかお前さんを助けてくれるやもしれん。大切にするんじゃぞ」

f:id:luciker:20211218014104j:plain



 

「ねぇねぇ!シオン!もしかして写真の2人って…」

ーー…あぁ。俺と…もう「いない」が俺の最愛の人さ

「…!あ、えっと、その、ごめんなさい…私……」

ーーすまない、意地が悪かったな……お前は、優しいな

 

今のは俺が悪かった。シュンとしてしまったコロンの頭を撫でながらそう言った。

 

「コロンや、そろそろ家に帰らんでもよいのか?遅くなってはマックスたちも心配するじゃろう」

「そうね、そろそろ帰らないと。シオン、今日は私の家に泊まっていって!みんなには私が説明するわ」

「そうじゃな、マックスたちなら心良く快諾してくれるじゃろうて。そうじゃ、コロンや。頼まれていたドレスじゃがな、このおもちゃ箱型のキーホルダーに入っておるぞ」

「ホント!?どうもありがとう、爺さま!」

 

爺さんの家を後にした俺たちはコロンの自宅に向かう。

街の大通りから少し外れた所にある酒場がコロンの家らしい。

恋人との話を質問攻めされつつ歩いていると酒場の看板が見えてきた。

酒場「Magical Musketeer」

 

「………見…けた」

ーー…ん?

 

ふと辺りを見回す。誰かに見られてる気がしたが…気のせいか?

俺は扉に手を掛け、酒場に入った。

 

「ただいま〜!遅くなってごめんなさい」

「コロン!遅かったじゃないの!心配したのよ!?…ったく、カラミティ!何で一緒に行ってあげなかったの!?」

「いだだだだ!痛い!痛いってスターの姉貴ー!」

「アンタもよ!ワイルド!」

「………すまん」

 

カウンターの奥から長身の女性が、女の子の耳を引っ張りながら顔を出す。

その後ろをドレッドヘアの大柄な男が付いてくる。

f:id:luciker:20211216002602j:plain
f:id:luciker:20211216002610j:plain
f:id:luciker:20211216002615j:plain

 

 

「だってキッドのヤツがよぉ〜…痛っ!」

「嘘つくんじゃないよ!面倒だっただけでしょ?それにキッドたちは依頼でいないでしょう」

「………カラミティに「コロンも1人のレディだから大丈夫」と言われ納得してしまった。すまん」

「あ!コラ!ワイルド!!…姉貴!痛い痛い痛いっ!」

「全く、お前は〜っ!!」

 

カラミティ、ワイルドの2人がスターに説教を受けていると、2階からハンチング帽を被った男が現れた。

f:id:luciker:20211217230859j:plain

 

 

「おいおい、客人の前だぞ?もう少し静かにしないか。おかえりコロン。怪我はなかったかい?」

「大丈夫よ、マックス。紹介するわ、こちらはシオン。危ない所を助けてもらったの」

「そうだったのかい。僕はマックス。コロンを助けてくれてありがとう、シオン」

 

マックスはハットを脱ぎ、手を差し出してくれた。

俺が握手を躊躇っているとコロンが羽織っている布を取ってしまった。

 

ーー…!おいコロン!!

「おぉ!これは驚いた。君「も」人ではないんだね?」

ーー…君「も」?それはどう…

 

俺が言い終えるより早く意味が分かった。

マックスの左腕に角が生え、爪は鋭く伸び、肌は青白く肥大した。耳は尖り、口からは牙は伸びた。

ちなみに。とマックスが言うと後ろにいたスターたちも片腕が青白く変化していた。

 

「ここにいるのはワケありの連中でね。僕たちは「ザミエル」というヤツを探して酒場を営みながら傭兵稼業もしているんだ。でも最近は教団のせいで客足が減ってね…」

ーー…怪しい情報も手に入らないわけか。悪いが俺もザミエルというのは知らないな

「話が早くて助かるよ。あ、スター!コロンを頼めるかい?姫はお疲れのようだ」

「はいよ。旦那、ウチのコロンが世話になったね。何か飲むかい?」

「いや、僕が用意するよ。スターたちも休むといい」

 

隣を見るとコロンが首で大きく船を漕いでいた。

あんなことがあったんだ、元気に振る舞うのに疲れたんだろう。

スターがコロンを抱きかかえ2階へ登っていく。

 

「さて。街の現状は知ってるかい?良かったらウチに泊まるといい。コロンもそのつもりで連れて来たんだろうしね」

ーーそうさせてもらおう。街のことはコロンの知り合いの爺さんから聞いた。

「サモンさんだね。僕たちも色々と助けてもらっていてね。おっと酒はイケるクチかい?」

ーー酒場のゴミ捨て場が俺のベッドさ。2日は飲めるぞ?

「ハハッ、そりゃあいい!これも何かの縁だ。とっておきを1つ空けるとしよう」

 

酒が進みマックスと互いのことを話し合った。

俺は生ける屍になって死んだ恋人の復讐を果たし、死に場所を求めていることを。

マックスは孤児だったらしく息子同然のように愛し育ててくれた老夫婦に頼み、同じく孤児だったコロンを養子として迎えることに。だが「ナンバーズ大戦」と呼ばれる戦争に巻き込まれ、家族を守るためマックスは「ザミエル」という男と取引し「標的に必ず命中する魔弾」に手を出した。何とか家族を守ることが出来たが隠れていた兵士に発砲にした際、弾は兵士と老夫婦を貫いた。その魔弾は「7発目は射手の大切なモノに必中する」というものだったのだ。老夫婦が息を引き取る直前マックスに言葉をかけた。

『お前は優しい子だ。私たちを守ろうとしたんだろう?こんな老いぼれを親と呼んでくれて嬉しかったよ…。マックス…コロンを頼んだよ…』

 

「それが父さんとの…『デメット』との約束だ」

ーーあのスターたちもか?

「うん。魔弾と関わって大事な人を亡くしてる」

ーーザミエルを見つけてどうする?

「分からない。家族を守るためとはいえ魔弾に手を出したのは僕自身の意志だ。僕はね…悪魔の取引をした自分が許せないんだよ」

ーー…そうか

「君はどうなんだい?聞いた限りは死ねないみたいだが、行くあてもないまま旅を続けるのかい?」

ーーフッ、試してみるか?

 

俺は眉間に指をさして挑発した。

 

「おいおい、冗談はよしてくれ。それに今は面倒事を起こすのはマズい」

ーーそれもそうだな

「そろそろ寝るとしようか。奥に客室があるから好きに使ってくれ」

 

翌朝ー。

店の方へ行くとマックスたちが小太りの男と話をしていた。

 

「おはよう!シオン!よく眠れた?」

ーーおはようコロン。アイツは?

「あの人は雑貨屋のデモリッシャーさん。今回の依頼人なんですって。あ、あの人も『同じ』だから」

 

同じ…つまり「人間じゃない」ということか。

確かに帽子を深く被って隠すように厚手のコートも着ていた。

 

「…なるほど。では行方不明になったお姉さんを見つけてほしいと?」

「えぇ…姉の『リリーサー』は買い物に出掛けたきり帰ってこないのです…。きっと教団のせいに違いありません…!」

「まーた教団関係じゃんかー!そろそろブッ潰そうよぉ〜」

「ソレが出来たら楽なんだけどねぇ…アタシは何か不気味なモノを感じるよ」

「………向こうの戦力が把握できない以上、下手に動かない方がいい」

 

マックスたちが話していると、コロンが依頼人に抱きつきにいった。

 

「デーモさん!こんにちは!」

「やぁコロンちゃん、どうも。こちらの方は?」

「こっちはシオン!旅をしてるんだって!お世話になったお礼に泊めてあげたの」

「そうでしたか…シオン様、私はデモリッシャーと申します。あの私は」

ーーあぁ、いい。俺も似たようなモンだ。シオンだ。

 

言い終えるより早く骨の腕を見せた。

納得した様子でデモリッシャーは深々と頭を下げてくれた。

 

「ワイルドの言う通り、調べようにも下手に動けないね…どうしたーー」

 

ドガアァァーン!!

 

「……ここか『聖女』がいるのは」

「はい!!コイツらです!!」

「教団の皆さん!こっちです!」

 

突然、酒場の扉が吹き飛び土煙の中から白いローブに身を包んだ男と、昨日コロンを連れ去ろうとした2人組の男が現れた。

f:id:luciker:20211217230842j:plain

 

 

「教団じゃ扉は吹き飛ばすものって教えているのかい?あーあー、こりゃあ修理が大変だ…」

「大神祇官さま直々とはね。どうだい?一杯飲んでくかい?」

「その『金髪の少女』をこちらへ渡せ。さもなくば…」

「ハァ!?仮面で目が見えてねぇのかぁ?コロンのどーこが『聖女』だってんだヨ?」

「ちょっと!カラミティ!」

「………コロンは俺たちの家族だ。渡さん」

 

カラミティ、ワイルドがコロンを庇うように前に出る。

神祇官の後ろには大勢の教団員が顔を覗かせていた。

すると細身の男がすがるように大神祇官に言った。

 

「なァ?大神祇官さま!『金髪の少女』の場所を教えたんだ。早くオレにも加護を授けてくれよォ!」

「あああ後を付けて酒場を見つけたのはオレだぞ!」

「えぇ。分かっていますよ。協力感謝致します。さ、手を出して。神の加護があらんことを」

 

男たちが差し出した手の甲に黒紫のマークが現れる。話に聞いていた「聖痕」なのか?

 

「やった……!「聖痕」だァ!これで神の加護がァァアアアアアア!?」

「お、おい!どうしシシシシシィイイイイイイイ!!?」

ーー!?コロン!耳を塞げ!見るな!

 

俺は咄嗟にコロンを抱きかかえる。

悲鳴と惨たらしい音を出しながら男たちは「聖痕」に呑まれ姿を変えた。

f:id:luciker:20211216002230j:plain
f:id:luciker:20211216002237j:plain



 

「……探っていた「聖痕」の秘密を、この目で見られるとはね。全く虫唾が走るよ」

「何を言う?彼らが「望んで」受け入れた事だろう?私は協力の報酬として加護を授けただけだ。もっとも?ここにいた『金髪の少女』は「聖女」では無かったがね」

「加護だァ!?エゲツねぇことしやがる……」

「でもこれでハッキリしたね。ブッ潰してもいいゲス野郎だって」

「………遠慮なくやらせてもらおう」

「いないのであれば長居は無用。せいぜい彼らに「呑まれ」ないようにな。マスター、釣りはいらん取っておいてくれ」

「やれやれ…自分勝手なお客様だ…」

「あー…それと。私たちの調査をしていた…お仲間の3人だがね?生きている事を願うばかりだ」

 

ガァン!!!

 

「貴様……キッドたちに何をした!?」

 

激昂したマックスが信じられない速さで殴りかかったが、黒い鎧の騎士に守られ大神祇官には当たらなかった。

f:id:luciker:20211217230822j:plain

 

 

スターたちも血相を変えマックスの援護に加わる中、大神祇官は姿を消した。

マックスの背後に武装した教団員の爪が迫るが、すんでの所で割って入ることができた。

 

ーーマックス!

「助かった…すまないが手を貸してくれないか?」

ーーそのつもりだ、どうする?ヤツを追うか?

「いや数が多すぎる…それにコロンたちもいる。この場の制圧が優先だ!」

 

中越しにマックスと言葉を交わし、互いの死角を埋めながら襲いくる教団員たちを倒していく。

 

「シオン!あの黒鎧を叩けば一先ず収まるはずだ!僕も援護するからヤツを頼む!」

ーー任せろ!

 

群勢を抜け黒鎧の元へ向かう瞬間、突如、黒鎧が雄叫びを上げた。

 

「ギィエェヤァアアアアアアアアアア!!」

ーー!?なんだ?力が抜け……

「シオン!!」

 

バアァァン!!

 

急に力が抜け体勢を崩した隙を突かれ、黒鎧に壁に叩きつけられた。

俺は「死ねない」が痛覚はある。身体の中で鈍い音が響く気がした。

 

ーーガハッ…!

「(なんだ…?指が重い…)シオン!追撃来るぞ!ワイルド!!」

「………ああ!」

 

俺の胸を狙った黒鎧の槍の投擲を、マックスが撃ち起動逸らす。

だが援護に来たワイルドも力が入らないのか俺を抱えて吹き飛ばされてしまう。

 

「シオン!ワイルド!」

「………ぐっ…すまん、上手く動けなかった」

ーーいや助かった、アンタがいなけりゃ今ごろ串刺しだった

「アンタたち!無事かい!?」

「いつもだったらコレくらいでバテることないのに〜!」

「恐らく、あの咆哮だ。敵味方関係なく一時的に力を吸い取るみたいだね」

 

マックス、スター、カラミティも合流し、周りを見ると教団員たちも体勢を崩していた。

 

「で、どうするんだい?あの厄介な黒鎧」

「………どうにかして黙らせるしかないな」

「だぁーっ!!面倒くさいなぁ!あのデカ頭ごと吹っ飛ばせば全部終わるよ!多分!!」

「あ!おい、カラミティ!」

 

言うや否やカラミティは黒鎧めがけてランチャーを発射する。

轟音が鳴り響き黒鎧の頭を、文字通り吹き飛ばし動きが止まった。

 

「へへっ、やーりぃ!」

「カラミティ…一応ね?鎧を着ている人の事を考えて…」

ーー待て。様子がおかしい

「ギョエェヤァアアアアアアアアアア!!」

 

頭が無いはずの黒鎧から再び咆哮が轟く。また身体の力が抜ける。

黒鎧から大きく伸びた腕が周りの教団員を掴むと、グチャグチャと音を立て次々と取り込んでいく。

 

ーーあの様子じゃ、中に人はいないみたいだな

「なん…だい?あれ…。喰ってる…の…?」

「………どこまでも悪趣味な」

「どうやらご立腹だね、見境なく喰い散らかして再生してるよう…だっ!」

「ひっ……!」

「危ない!!」

ーーコロン!!「「コロン!!」」

 

攻撃か喰うためか、黒鎧の触腕を躱す。

だが恐怖で動けなかったデモリッシャーをコロンが庇い取り込まれてしまう。

 

「怪我はない!?デモさ…ん!……よか…った……」

「あぁぁ…!コロンさん!コロンさん!!わ、私のせいで……」

ーーちっ!マックス!どうする!?

「……っ!闇雲に突撃しても無力化されるだけだ…どうしたらいい!?…考えろ、考えろっ!」

 

考えている間にも黒鎧の攻撃は止まず、コロンは取り込まれ顔も見えなくなった。その時ある疑問が浮かんだ。

 

ーー…マックス、このいざこざで「魔弾」は撃ったか?

「さっき君を助けるのに「6発目」を撃った、次は…「7発目」だ」

ーー「魔弾の7発目は射手の大切なものに当たる」だったよな?

「シオン?一体何が言いたいんだ?」

ーーコロンを取り込んだ黒鎧。アイツは「コロン」だと思うか?

「!?……「僕にコロンを撃て」と?」

ーー他に何かあるか?俺がヤツに突っ込んでコロンを引きずり出す。お前はそのきっかけを作ってくれ

「昨日会ったばかりのヤツに酷なことを言うね…」

ーー「一晩酒を交わした仲」だろ?頼んだぞ

「あ!おい!シオンの旦那!」

「…どうすんだいマックス?うちらに当たる事を気にしてんのかい?」

「………痛そうだが、その時はその時だ」

 

珍しくワイルドが軽口を叩く。皆も覚悟は出来ているようだった。

俺はコロンを救うべく駆け出した。襲い来る触腕、教団員をいなしながら黒鎧の元へ。マックスなら撃つ。何故か心の中にそう確信があった。

そして、黒鎧と対峙する。

骨の腕で鎧を剥がしながら取り込まれたコロンを探す。

黒鎧の攻撃は止まらない、しがみ付く俺を引き離そうと触腕が身体を刺す。

 

ーーぐっ…どこだ!コロン!コロン!!

 

だが、コロンは見つからない。

もう取り込まれたのか!?最悪が頭をよぎった…その時ー!

 

バキューーン!!

 

「魔弾」が俺を貫き、黒鎧に当たる。

「7発目は射手の大切なものに当たる」黒鎧に当たったという事は、コロンはまだ取り込まれていない!必ず当たるなら取り込まれたコロンは弾丸の向かう先にいる!!

 

ーー…いた!コロン!!

「……シ…オン?」

ーーグ…ォオオオオオオオ!!!

 

黒鎧が俺を取り込もうとコロンに伸ばした手を蝕む。

悪いがこの手を離すつもりはない!触腕に阻まれながらも黒鎧からコロンを引き摺り出した。

 

「シオン!コロン!!」

「無事かい!?2人とも!」

「おわっ!旦那…」

「………派手にやられたな」

ーーあぁ…大丈夫か?コロン?

「うん…また…“助けてくれた“ね…」

 

コロンは無事だったが、まだ安心はできない。

ヤツを、黒鎧をどうにかしなければ。

 

ーーで?あの黒鎧だが…どうする?

「1つ案があるとすれば…『聖痕』だね」

「………あの『聖痕』が原動力?」

「仮説だけどね…。もしそうだとしてもヤツの『聖痕』を見つけないと…」

ーーその『聖痕』ならヤツの体内にあった。だがアレを壊すには俺じゃないと無理だろう

「アンタ!そんな身体で!?」

 

『聖痕』の影響か、再生が遅く身体はボロボロのままだった。

ヤツの体内にあった『聖痕』。恐らく弾丸は届かない。

あの咆哮もある、正面から殴り合える俺が壊す他にないだろう。

 

「シオン…ヤツと相討ちになる気じゃないだろうね?」

ーー…それも考えた。あの黒鎧なら俺を「殺せる」んじゃないか?と

「…!ダメよ!シオン!!」

ーー安心してくれ、コロン。死ぬつもりはない。お前のおかげだ。

「私の?」

ーー「彼女」の復讐に囚われた、こんな俺でも誰かを助けられることを…コロン、お前が教えてくれた!そんなお前を見捨てて死ぬ訳にはいかないからな

 

コロンの頭を優しく撫でる。

復讐のため身に付けた…俺の持てる力、全てを今、コイツらを守るために!

f:id:luciker:20211218222459j:plain

 

 

「…っ!なら!私も戦う!」

「何を言ってるんだ、コロン!?」

「もう足手まといは嫌なの!私、ずっと守ってもらうばかりで…あの時だって!マックスは私たちを守るために「魔弾」を使って……」

「コロン!戦うっつってもアンタはー」

「爺さまに頼んで作って貰ったの。このドレスがあれば!オーバーレイ!ドレスアップ!」

f:id:luciker:20211218222519j:plain

 

 

コロンが言うと手にしていた、おもちゃ箱のキーホルダーが光り黒いドレスがコロンを包む。

 

「ハァー!?コロンいつの間に!?」

「………さすがは我が家のおてんば娘さまだな」

「…サモンさんには後で挨拶しないとね…。コロン、僕たちの援護頼めるかな?」

「もっちろんよ!任せて!」

ーーよし、行くぞ!!!

 

俺は黒鎧に向かって走りだす。目標はヤツの『聖痕』!

マックスたちも迎撃、支援の準備を始める。

 

「みんな!主役のお通りだ!黒鎧までシオンを援護する!!」

「「「おう!!」」」

「旦那ァーー!!気にせず突っ込めぇ!!道はウチが作ってやる!デスペラーーードォ!!」

f:id:luciker:20211218222538j:plain

 

 

俺の前に立ち塞がる教団員たちがカラミティが放ったランチャーにより吹き飛ばされ、言葉通りに道ができた。

黒鎧の触腕に加え、大勢の教団員が俺に襲いかかる。俺が避けるように大きく跳躍すると、俺の後ろにいたワイルドが機銃を構え一斉掃射の体勢を取る。

 

「………塵一つ残さん!デッドマンズ…バーースト!!!」

f:id:luciker:20211218222553j:plain

 

 

そんな中、マックス、コロンを狙った教団員が目によぎった。がー

 

「ぐ………クロスドミネーター!!」

f:id:luciker:20211218222611j:plain

 

 

「キッド!無事だったのか!」

「ハハ……トチったが何とかな…カスパールとドクトルも無事だぜ!」

 

スターの肩を貸してもらって、キッドと呼ばれる男が現れる。問題はなさそうだ。

そして…俺は再度、黒鎧と対峙する。

 

ーーよう…クソ鎧。受けた恩…キッチリ仇で返させてもらうぞ

「…………」

 

黒鎧の触腕が四方八方から襲いくる。それを背中の骨でいなしながら骨の刃で切り落とす。

互いの実力は拮抗…いや再生力に身を任せた泥試合が続いたが、黒鎧は俺を攻撃しながらも残した触腕で教団員を取り込み、押されはじめていた。

その時、一瞬の隙を突かれ、あの咆哮がこだまし身体の力を奪われ、黒鎧の触腕が俺の頭をめがけ殴りかかってくる。

 

「ギェヤァォオオオオオオオオ!!!」

ーーマズい!

 

ダアァァァァァン!!!

 

触腕の攻撃は俺に当たらず、横の地面を砕いていた。

 

ーーなんだ、一体…?

「最低なエスコートどうもありがとう。そんなんだから「聖女」さんにも愛想尽かされるのね」

ーーコロン?

「もう私の『家族』に手は出させない!!」

f:id:luciker:20211218222625j:plain

 

 

「グガァアアアアアア!!!」

ーーお前の相手は俺だろうが!!!…助かった。コロン

「フフッ、さぁやりましょう!シオン!」

 

コロンを刺そうとした槍を弾き飛ばす。

黒鎧と取っ組み合いになり、力を奪う咆哮が鳴り響く。

コロンに背中を押され不思議と力が湧いてきた。

f:id:luciker:20211218222643j:plain

 

 

全身全霊で体内にある黒鎧の『聖痕』を目指し、しのぎを削る。

だが、あと一手…一手が届かない。

 

ーーくっ…ダメなのか…!?

『諦めないで!』

ーー!?

 

今の声は……いや、そんなはずは…「彼女」はもう…!

突然、胸のロケットが光り出しサモン爺さんの言葉が頭に浮かんだ。『このロケットには何か特別な力を感じるよ。いつかお前さんを助けてくれるやもしれん』

 

『自分が生きていく意味。やっと見つけたんでしょ?なら死んででも離しちゃダメ!』

ーー……君は死んだ…はず…

『貴方は見ず知らずの誰かの為に戦える人。初めて私と会った時みたいに』

ーー……“シオン“

『あ、でも自分を見失ったと言っても自己紹介の時に“私の名前“を言ったのはビックリしちゃった』

ーー……。未練がましいよな

『冗談よ、それだけ私を想ってくれたんでしょう?忘れてしまわないように』

ーー“シオン“…俺はー

『さ、もう行って?コロンちゃんが待ってるわ。あんな鎧に負けてコッチに来たら許さないからね!』

ーー……ありがとう。“シオン“…愛してる。

『私もよ。ーーー。』

f:id:luciker:20211218014104j:plain

 

 

ーーうぉおおおおおおお!!

「!!?」

 

全身に力が溢れ、崩れていた身体が元に戻り、ヤツの再生力を上回った!

黒鎧の掴みくる両腕と触腕を切り落とし、鎧をこじ開け『聖痕』が露わになる。

 

ーーそろそろ白黒つけようぜ…ヘイトレッドインストォオオオルッ!!!

「グギャァアアアアアアアア」

 

黒鎧の『聖痕』を背中の骨で滅多刺しにすると『聖痕』はガラスのように割れ、黒鎧はサラサラと塵になって消えた。

 

「やった!やったわ、シオン!!」

ーーあぁ…これで…やっと……

「シオン?シオン!!」

 

安心感か疲労感か。身体に力が入らなくなり俺は目の前が真っ暗になり意識を失った。

 

 

 

数日後。

 

 

 

「シオーーン!準備できたー?」

ーー待ってくれ、すぐ行く

 

あの日以来、教団に動きはなく街から教団員がいなくなった。

なんでも「新たな聖女が見つかり、儀式の準備を進めるため」らしい。

教団が追っていた「聖女」…教団の目的…まだ不明な点が多く、俺たちが教団を追った後、街に襲撃が来ないとも限らない。そのためマックスたちと話し合い、今は下手に動かず「鉄獣戦線」と連携をとり慎重に事を運ぶことになった。

そして、俺は街に残りマックスたちと行動を共にする事にし、どうしてもやっておきたい事があったため出掛ける準備をしている所だ。

 

ーーよし、行くかコロン。

「うん!でも「彼女」さんのお墓参り、私も行って大丈夫なの?」

ーーコロンは街を出た事がないんだろう?ちょっとした旅行だと思えばいい

 

俺がやっておきたかった事。それは「彼女」のお墓参りだ。

黒鎧との戦い以降、「彼女」の声は聞こえなくなった。

あの時、声が聞こえなければ、「彼女」が助けてくれなければどうなっていたか分からない。

ケジメも含めて、改めて「彼女」の元へ行こうと思ったのだ。

 

「あ、お供えするお花は決めたの?」

ーーあぁ、“シオン“っていう花にする事にした。途中で買って行こうか

「その花なら知ってるわ!同じ名前なんて偶然ね。確か花言葉はーー」

 

 

〜Fin〜

 

 

 

出演者のみんな:

f:id:luciker:20211218214155j:image

 

Special thanks:じろうちゃん

 

総監督やら何か諸々全部:るしくぁ

 

 

 

〜Thank you  for watching!〜

 

 

 

ライフを笑う者はライフに泣く。

遊戯王界一のライフコントロールテーマ「アロマ」

そのアロマの巨匠ー。カイマンが送る最新作!

tokorotenkaiman.hatenadiary.jp

12月19日…ロードショー